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「さてと。これからどうする?」

 ぴょん、と皆の前に百合菜が飛び出し、首を傾げながらそう問い掛ける。

 階段で足を滑らし保健室へ直行したはずなのだが……その回復能力はおかしいだと思わざるを得ない。

「とりあえず、私は落ち着ける場所に行きたいな。外だと私が落ち着けるか分かったものじゃないし」

 人差し指を立ててそう答えたのはすずだ。

 そしてその言葉が何を意味するのかは、長い付き合いである歩達にはすぐに分かった。

「アイドルも大変だな……。入学祝パーティーが終わったら仕事再開だっけ?」

 と、いうことだ。

 

 この月見すずという少女、これでも全国的に有名なアイドルだったりする。

 それはもう、初めて会った時は歩だって驚いたものなのだが、それは割愛する。

 で、そんなアイドルは当然仕事に忙しく、本来ならば学校が終われば家や事務所に直行のはずなのだ。

 だが新年度も始まるこの時期だ。

 何でも、事務所側からも入学祝パーティーが終わるまで休んでいいと言われているらしい。

 そんなわけで、彼女は今現在休業中なのである。

 

「そうそう。まぁ、それまではのんびりと遊ばさせて貰うよ」

「遊びすぎて休むのを忘れたら意味無いけどな」

 と、隼人が何気なく言った言葉に誰もが納得そうな頷きを見せ、すずへ視線を送る。

 何というか、その確立の方がかなり高いと思ったのだ。

「……な、なんだよー。皆揃って何でそんな目するのー」

 すずもとりあえずは力無き反論を唱えるも、説得力は皆無。

 というかその反応を見る限り、本人も自覚しているようだった。

「何でそんなずぼらな性格でアイドルやってるんだろう……こいつ」

「うっわ……歩、何気にそれ酷いって気付いてる?」

「気付いてる。でも敢えて言う」

 というか真実だ。

 そもそもこの国民的アイドル、実際には家事とか全般はあまり出来ないという欠点すら持ち合わせているのだから。

 もちろん公には発表などされていない。

 それどころか、歩達だからこそ知ることだった。

「うるさいー」

「地の分に突っ込むな」

 閑話休題。

 

「まぁ、とりあえずは歩君の家でも行く? 梓もいるし、多分椎乃ちゃんも来てるでしょー」

 とりあえずは話題の軌道を修正し、その上で百合菜がそう提案する。

 ちなみにその百合菜の言葉に出てきた椎乃とは、梓の親友である人物である。

 フルネーム、神奈椎乃(かんなしいの)

 梓と同じ中学校の同級生で、現親友である少女。

 そして同時に、今年度、晴れて歩達と同じ学校へと来ることが決まった少女でもある。

 顔はかなり可愛い方に分類されるとは思うのだが、その性格にかなり難点があったりするのだがそれは今は割愛。

 というか別に好きになれない性格、というわけでもないので、付き合いの長い歩達は誰も気にはしないのだ。

 

 で、なぜそんな少女が歩の家にいるのかっていうかどうしてそれが分かるのかと言えば、理由は簡単。

 暇があればとりあえずは親友の家に行く。

 それが彼女の行動パターンなのだから。

 

「んじゃまぁ、とりあえずは歩の家ってことで。いいか?」

「大丈夫だろ。てか、梓も賑やかな方が好きだろうし」

「じゃあけってーい」

 まぁそんな椎乃も含め、以前からの知り合いである彼等には共通の点が一つ。

 

 何よりも賑やかで楽しいことが好き、ということだ。

 

 

 

 MEMORY2 彼等の日常

 

 

 

「椎乃スペシャルキーック!」

「ぐふぅっ!?」

 

 そして、第一声と第二声は、家の中と外。両方から響いた。

 そしてその第一声の主は、扉を開けた第二声の主――翔の腹に見事な飛び蹴りを食らわせてから綺麗に地面に着地して、

「あれ? 歩じゃない?」

 首を傾げ、神奈椎乃はそう軽い一言を放った。

 

「わわ……。翔君がぶっ飛んだ……」

 まるでポルターガイストを見ました的な口調で梓がそう告げ、全員が傍観しておいて何を、という視線を梓へ向ける。

「傍観者も、ある意味同罪だからな?」

「えー、だって止める間無かったよ?」

「そもそもあっても止める気無いだろお前」

「そんなことないよっていうか歩ちゃんだって見事にぶっ飛ぶ翔君避けたじゃん」

「いやあれは身の危険を感じてだな――」

 

「翔、生きてる?」

 そしてそんな会話の中、忘れられていた被害者である翔を突っつきつつ、すず。

 そんな、地面に転がり哀しげに涙を流す翔の姿は、かなり惨めだった。

 だが、それ以上に重要なことに歩は気付く。

 今まで梓と口論していた口が止まり、その首が、ゆーっくりと、加害者である椎乃を見る。

 

「……お前、まさかこれを俺に食らわせるつもりだったのか」

 

「え? そりゃもっちろんそうに決まってるでしょー?」

 

 刹那。

 ぶん、と。歩の拳が空を穿った。

 

 だがそれをひらりと避けてみせる椎乃。

 

 そしてそんな二人はさておき、倒れた翔の傍にしゃがみこみ顔を覗き込むすずと梓。何とも言えないような呆れ顔をし、ため息を吐く隼人と百合菜。

 

 そんな不思議な光景も、この面子では当たり前の光景だった。

 

 まぁ……翔のように寛大な被害者が生まれるのは稀だが。合掌。

 

 というか。

 さっきの一撃が、もし普通のお客さんに当たっていたらこの少女はどう責任を取るつもりだったのだろうか。

 

 

 

 机の上に、計七人分という結構大量の紅茶が並ぶ。

 そんな人数分のティーカップがあるのは、それだけ彼等がここへよく訪れているという証拠だろう。

 まぁその中身が毎回違うのは歩のちょっとしたこだわりなのだが。

「そういや、この面子で集まるのも梓達の卒業式以来だったか?」

 紅茶を口に運びつつ、隼人がそう口を開く。

「あー、だね。懐かしいなぁ卒業式」

 感慨深く椎乃が呟くものの、実はもう一つ。印象深いものもある。

「梓、あの時はボロボロ泣いてたっけな」

 と、そう言う歩の言葉も然り。

 まぁそれも普通だろうから馬鹿にするわけではないのだが、とりあえず梓は号泣していたのだ。

 学校から離れたくないだの仲のいい先生と別れたくないだの下級生と別れたくないだの。

 あの涙が、果たして一体何人の同級生や下級生の涙を誘ったことか。

 少なくとも、担任は泣かせたと思う。

「う……まぁ、あれは仕方ないよ……うん」

「いや別にただ思い出しただけだし。そこまで気にしなくてもいいけど」

 ちなみに、椎乃の場合は最初から最後まで満面の笑みと、なかなか侮れないことをやってのけているのだが、それはまぁ別のお話ということで。

「そうそう。ていうか、ボクも中学校の卒業式は泣いたからねぇ。始めは泣かないと思ってたんだけど、いざとなると耐えられないもんだし」

 そう横からも百合菜のフォローが入り、梓がやっと立ち直る。

 と同時。

 驚いたような表情で梓が百合菜を見た。

 

「……え、嘘、泣いたの? ……百合菜が?」

 

 そして、そう告げた。

 

「……ん、んん? ちょっと待って今のは聞き捨てできないよ梓ー? 君の中でのボクってどういう風になってるのかなぁ?」

「え……えぇだって百合菜って何だか男の子っぽいってうわぁーっ! ごめんなさい失言でした許してーっ!」

 ゴゴゴ、という背景音が似合いそうな形相で、百合菜が梓に迫り始めていた。

 対する梓は後退りを始めるが――あぁほら、既に壁に追い詰められた。

 

 まぁ確かに今のは失言だろう。

 自分が外見からどこか男の子に見えるということをコンプレックスに持つ百合菜にとって、そういう発言は本来タブーだったのだが……。まぁ、合掌。

 

「ふ、ふえぇぇーんっ! たーすーけーてーっ!」

 

 ……合掌。

 

 

 

「……で、何の話してたんだっけ?」

「いやこれといった話はしてないし」

 爽やかな笑みを浮かべる百合菜に、歩が呆れ顔で返した。

 ちなみにその後ろでは、今にも泣きそうな表情で梓が隠れている。

 何をされたのかは、まぁご想像にお任せだ。

 

「でもさ、このメンバーって何時も何気なく集まるんだけどさ、」

 そんな三人を横目に、すずは人差し指を立て、

 

「ちゃんと目的を持って集まることって少ないよねぇ?」

 

 そんな核心を突いてきた。

 だがその言葉に、全員があぁそういえばと頷く辺り、彼等が集まった際の計画性の無さのたかが知れると言うものである。

 

「あ、そういえば忘れてた」

 

 そんな計画性の無さの集団の、筆頭的存在とも言える椎乃が、不意に立ち上がって声を上げる。

「制服、お金払ったのにまだ取りに行ってないんだ」

 ……どうだ、この計画性の無さ。

 というか明日必要だと言うのに、忘れるか? 普通。

 少なくとも、自分は無理だ、と歩は考える。

「……お前、馬鹿な子な」

 そんな隼人の発言も、ここまでくればもはや当然と言えよう。

 だが、それが当然でも当人からしたら否定したいことであるわけで、

 

「馬鹿って言うなー。というかちゃんと受験したもん受かったもん入試主席(、、、、)だもんっ」

 

 なんて、子供のような口調で、どえらいことを言い放っていた。

 入試で主席なんて、そうそう取れるものではない

 だがそれをこの少女は、まるで大したことでもないように言い放ったのだ。

 

 だが、その言葉には誰も驚きはしなかった。

 何度も言うように、彼等は知り合って長い。

 始めに驚きこそすれ、今ではそれはこの中では周知の事実。

 だから誰も驚きはしないのだ。

 まぁもっとも、

「羨ましいなぁ……。私にもその頭のよさ分けてよ、しいちゃん」

 などと、こんな梓のように羨む奴は今だ多いのだが。

 あぁちなみに。

 言わずもがなだが、『しいちゃん』とは椎乃を梓が呼ぶ際の呼称である。

「これは天性だから無理だよー。欲しかったら努力努力」

「……努力してない奴に言われると無茶苦茶腹立たないか? 歩」

 そんな椎乃の態度にイラッと来ている大人気無い奴一人。翔だ。

 そしてそんな翔に対し、いや話を振られても、と言う表情で歩が口を開く。

「いや、俺は一応努力してるつもりだから何とも思わないけど。つか、お前、二年生では補習無くせよ? 一年生の時は毎回あったじゃないか」

 と、その言葉に翔の周りの空気が一気に重くなる。

 どうやら、傷跡だったらしい。

「ここにもウザい奴がいたか……」

 うぁー、と頭を抱え唸るように翔。

 努力しなかった奴の、まさに慣れの果てである。

「まぁ翔君はさて置き、椎乃ちゃんは早めに制服取りに行った方がいいと思うよ? 遅くなってまた忘れたら、もうボク達ではどうしようも出来ないし」

「うん、そうするー。あ、梓っち。自転車借りていい? ひとっ走り行ってくるからさ」

「え? うん、いいけど。自転車の場所分かる?」

「もうこの家に通って三年だよ? 勝手知ったる他人の家ってね。歩の人には見せれないようなえちぃ本の隠し場所も知ってるよ?」

「いやオイ待ておま――」

「あ、もちろん冊数も」

「だから待てって――」

 へぇそうなんだー、と呑気な梓の声に、うんそうだよー、と椎乃の呑気な声。

 しかし、それ以外の視線は歩へ向いていた。

 

「ほぅ、歩君のえちぃ本かぁ……ボクちょっと興味あるかも」

 キラーンと目を光らせ、百合菜。

「これは是非とも聞き出す価値ありだな……」

 ふっふっふ、と怪しい声を出しながら、翔。

「今朝の仕返しにはもってこいか……」

 ニヤリと不敵な笑みを浮かべ、隼人。

「大丈夫だよ? 雑誌で君のこと紹介したりなんかしないからさ」

 とても眩しい営業用スマイルを浮かべ、すず。

 

「――あぁもうなんだこの俺包囲網はっ! 新手の嫌がらせかそうなのかっ!?」

「さぁここでヒントです。クローゼットを頑張って探しましょう」

「お前それ殆ど答えだろっ!? てかそういえばお前何時俺の部屋に入りやがったっ!」

「にぱー」

 

 真昼間からギャーギャーと騒がしくなる柊家。

 だが、そんなこの光景もやはり変わらぬ彼等の日常。

 

 あぁちなみに。

 歩の持っていたえちぃ本とやらは結局見つからず、その結果は皆を落胆させ同時に歩を安堵させたらしい。

 

 

 

  あとがき


 皆さんどうも、昴 遼です。

 かなり遅くなりましたが、MEMORY2のお届けです。

 うーん……リメイクしたのはいいけれども、果たして何が変わってるんだろう……(ぇ

 原作に比べれば分作能力は上がったとは思うのですが、大まかな中身は何も変わってないような……

 いやまぁ、少しでも上手くなっていることを祈りたいですがね。

 まぁそれはさて置き。とりあえずこの時点でも結構キャラ設定とかいろいろをいじっています。

 性格は……原作通りにはなっているとは思いますが、実際はどうなんでしょうね?w

 自分の作品でも、こうも修正を加えてしまうと何だか分からなくなってくるのですよ。

 

 さて、それはともあれ。今回は歩にえちぃ本所持疑惑が掛かりましたが、その真偽や如何に。

 多分、余裕があれば椎乃編辺りで書いてみるかもしれませんw

 まぁお楽しみに。

 

 では、書くこともそろそろ無いので本日はこの辺りで。




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