「何か飲むか?」

「えっと、いえ。結構です」

 郁也の問いを片手を振ってそう答えながら、ウィンはリビングのソファーに腰を下ろした。

 というよりは、郁也が座るように勧めたのだが。

 そうか、と郁也は牛乳をコップに入れ、一応は自分の前とウィンの前に置く。

 どう言われても気遣いは大事だと、小さい頃に教わったものだ。

「あ……ありがとうございます」

「飲みたくなったら飲んでいいぞ。……で、だ。大まかな話は丘で聞いた話で分かった。もちろんそれが嘘ではないってことも」

「はい」

「……ただな、俺は君に頼まれたところで助けになれない(、、、、、、、、、、、、、、、、、)と思う」

 そう。郁也はあの後、ウィンにその話をされていた。

 助けになってくれる人――それを、郁也だとこの少女は言ったのだ。

 だが郁也にはそんな自覚は無し、当然そんなことが出来るとも思ってはいない。

 所詮世界の救世主など、そうそう出来ない、まさにファンタジーの世界だけなのだ。

「俺は戦うどころかウィンにすら助けてもらってた。だから、ウィンには悪いけど俺はそんなこと出来ない」

 だから、それが郁也の出した答えだ。

 ファンタジーとは所詮幻想。

 ウィンのように確かに存在はするのかも知れないが、それでもそれは自分に縁のあるものではないはずだ。

「そうですか……」

 だがどうにもこの少女、適任は郁也と思っているらしい。

 落胆の表情を見せると、そのまま俯いてしまう。

 一体、自分のどこにそんな風に思える要素があるというのだろうか?

 むしろそんなことは自分が聞きたいぐらいだというのに。

「……悪いけれど、他を当たってくれ。それまではこの家に寝泊りすればいいし、生活の面倒も俺が見てやる。……それぐらいなら、俺にも出来るからな」

 実のところ、今の時間はもう遅い。

 ウィンも、言うことは大人ぐらいしっかりしたものだが、ウィン自信が言うにはまだ十歳にもなっていない、立派な子供なのだ。

 仮に誰かに襲われても間違い無く返り討ちには出来ると思うが、それでもこの時間に一人外へ出すわけにはいかない。

 というか、この世界には警察、もしくは補導員という存在があるのだ。

 身柄もまったく不明である以上、ウィンにとって都合は悪すぎる。

 だから郁也は、あの願いを断る代わりに居住する場所を提供することを提案したのだ。

「……分かりました。郁也さんがそう言うのなら、私も強制することは出来ませんから……――それまで、お世話になります」

「あぁ、よろしく」

 

 ファンタジーのような話。

 さらにそこから飛躍したような日々の始まりだった。

 

 

 

 Chapter3 現実の中の非現実

 

 

 

「……えっと」

 そしてその一日目。

 目覚めてまず見たのは、目の前で寝息を立てているウィンの寝顔だった。

 

 いや待て、と頭を掻く。

 昨夜、何も無かったはずだ。

 まして、やましいことなどしているはずも無い。というかしたら犯罪だし。

 当然ながら寝た場所も違う。

 ウィンには、郁也の母親の部屋を使うようにも確かに言った。それは間違い無い。

 ……だったらなんなのだろうか。この朝のドッキリハプニングは。

 ――……ここは、俺の部屋だよな?

 一応確認のため見渡してみる。

 間違いは無い。

「……えー」

 そして同時に、言葉も無かった。

 

「……ん」

 

 と、不意にウィンの瞼が動く――というか持ち上げられる。

 ……そして、バッチリ目が合ってしまった。

「あれ……郁也さん……? おはようございます……」

 体を起こし、ぺこりと頭を下げる。

 そこには全く覚醒していると思われる要素など存在しなく――

「あぁ……おはよ――」

 とりあえず返事をしようとしたその刹那。

「き――きゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 およそ五秒。

 たっぷりそれだけの時間を掛けた後、盛大な叫び声と、乾いた何かを引っ叩く音が朝の澄川家に響き渡った。

 

 

 

「朝飯、食いたいものあるか?」

 頬には真っ赤な紅葉を咲かせながら郁也が。

「あ……えっと、こっちの食べ物は私あまり分かりませんから、お任せします」

 今だに顔がやや赤いままウィンが、それぞれ言った。

 結局あの騒。夜にトイレに目を覚ましたウィンが、寝ぼけて郁也の部屋に潜り込んでしまったことが原因らしい。

 ならばそれの巻き添えを食った自分は何なんだと悩んだものだが、まぁ謝られたのだからいいだろうと、今に至る。

「了解」

 そう言うであろうことは大方予想が付いていたので、訊くよりも前に割っていた卵をフライパンに落とす。

 朝食の王道、目玉焼きである。

 他にもトーストにサラダと、洋食の王道までが勢揃い。

 もっともウィンにとってそれは未知の料理であろうが。

「それ、何ですか?」

 案の定。見知らぬものが多くあるこの家の中ではじっとしていることが出来なかったのか、座っていたはずのウィンは台所の郁也のもとまで郁也いてきていた。

「目玉焼きにトースト――サラダぐらいは見たこと無いか?」

「いえ……無いです」

 ということは、ウィンの世界には野菜とかが無いのだろうか。

 ……どうやって栄養バランスを整えるのか、かなり気になるところだった。

「まぁ詳しい説明は後にするとして、今は食おう。俺は今日はバイトがあるんだ」

 もっとも、昨日の出来事のせいでバイトのことなどしばらく忘れていたが、今朝思い出した。

 午前から入っているので、遅刻しなかったのはまぁ、運が良かったのだろう。

「え、もう出来たんですか?」

 しかし、ウィンにとってはそんなことよりも朝食が僅か十分足らずで作ってしまえたのか意外だったのだろう。

 郁也が皿の上に盛り付けた料理をまじまじと見つめながらそう返す。

「簡単に作っただけだからな。晩飯はもう少し手の込んだもの作ってやる――って、あー……ウィン、お前昼飯はどうする?」

 ご飯の話をしていて、それを思い出した。

 郁也はバイトがあるため、昼食までウィンの面倒を見ることは出来ない。

「え? 郁也さんはいないんですか?」

 案の定だった。

 どうやら向こうの世界にはバイトというものは存在しないらしい。

「俺はバイトだ」

「バイト……?」

「まぁ簡単に言えば、仕事だ。働いて金を稼ぐんだよ」

「聞いたこと、無いです」

 そりゃそうだろ、と苦笑を浮かべながら、郁也は朝食を盛り付けた皿を食卓に置く。

「まぁ、この世界のことは少しずつ学べばいいとして……まぁ、飯は俺が作り置きしておけばいいな」

 まさかウィン一人でコンビニとかスーパーに行かせるのも、それはそれで不安要素が盛り沢山だった。

「というわけで、俺はそろそろバイトに行くけれど……大丈夫か? 帰るのは夕方近いけど」

「あ、大丈夫です。留守番ぐらいなら出来ますから」

「了解。まぁ外に出てもいいけど……迷うなよ?」

 迷子になって警察のお世話、というのもやはり問題が多くて困るのだ。

「あはは……肝に銘じます」

 苦笑気味にそう返すウィンにどうにも不安はあったものの、それでも信用しないことには始まらない。

 隣の椅子に置いてあった鞄を掴むと立ち上がり、とりあえずはもう一度学校に行くことをウィンに伝えておく。

「それじゃあ、行ってくる」

「はい。行ってらっしゃい、です」

 そういえば見送られるのも久しぶりだな、なんて考えながら、郁也は外へと向かった。

 

「誰? あの子」

 

 ……そして、早速外にいた華奈に見つかった。

「……いや待て。それ以前に、何でお前がこっちにいる。方向逆だろ」

「ん? いやほら、今日は珍しく早起きしてさ、たまには一緒に行くのもいいかなって。で、誰?」

「……この物好きめ」

 こんな時だけ珍しく早起きしないでほしい。

 いや本当に。

「……親戚の子供だよ。父さん達の都合で仕事を向こうで一緒にするから、しばらく預かってくれって言われたんだ」

 しかも哀しいことに、何でこうすらすらと嘘が出てくるのだろうか……。

「え、でも昨日はそんなこと言ってなかったよね?」

「家に帰ったら、置手紙と一緒にあの子がいたんだよ。……俺の方がびっくりだ」

 多少――というかかなり無理のある設定だが、それでも身柄のはっきりしない少女を家に置いていることを知られたら何を言われるか分かったものではない。

「……郁也、もしかして――」

 だがしかし。

 郁也の心臓が跳ねる。

 ――嘘がバレてるか……?

 だとすれば、非常にまずい事態になる

 そしてその華奈の次の言葉で郁也は――

 

「――ロリコン?」

 

 思いっきりずっこけた。

 

「何でだよ……」

 そこはやはり華奈。

 見事なまでに騙された上、勘違い発言をしてくれた。

 そりゃ、騙されてくれたのはいい。

 だがおまけとしてその発言はなかなか酷い気がする。

「だって、家にいるってことは了承したんでしょ?」

「……したけどそれがどうやったらその要素に繋がる」

「え、違うの?」

「断じて違う」

 一度、この少女の中での自分のイメージについて語り合う必要がありそうだった。

「くそ……心配して損した……」

「何に?」

「……お前にあらぬ想像を抱かれるかもという不安に対してだ」

「……ロリコン説?」

「だから違うと言うに」

 本当に心配をして損をした。

 ため息一つ大きく吐くと、自転車を取るために車庫へと向かう。

「どういう想像だよー」

「それを話したら意味無いだろうが。てか、そろそろ行くぞ。話してて遅刻になったら洒落にならないし」

「あー、それもそうだね」

 にこりと笑みを浮かべ、そう同意する華奈なのだが――実はしっかりと前例があるので注意だ。

 学校の友達と喫茶店へ行く途中に出会い、そこから話し込んでしっかり三十分も遅れたのはまだ記憶に新しい。

 ……まぁ、あの笑顔を見るとすでに記憶の彼方なのだろうが。

 一応は大丈夫だとは思うが、とりあえず腕時計を確認。余裕があるのを確認した後、まぁ今日は大丈夫だろうと、二人並んで郁也き出した。

 

 

 

「何でお前が華奈と二人で来るんだよ……」

 喫茶店に入るなり、怒気を含んだ声が薫より放たれた。

 窓からでも見ていたのだろうか。

「珍しく早起きして、たまには一緒に行ってもいいかも、だそうだ」

「くそ……だったら俺は華奈の家の隣に引っ越すぞ……」

「勝手にしろ。てか、そこまでするお前の華奈に対する執念には感心するぞ」

 しかしそこまで悔しそうに言うことだろうか。

「私がどうかした?」

 と、不意に。

 それまでカウンターで話し込んでいた華奈がこちらの会話へと入ってきた。

「あぁ、聞け。華奈。こいつがだな――」

「やめっ! この馬鹿っ!」

 と、話し始めた郁也の口を薫が咄嗟に塞ぐ。

 まぁ今の話が華奈に伝わればストーカー扱いは免れないのだから、仕方ないだろうが。

「薫が、どうしたの?」

「何でもない、何でもないんだ華奈っ!」

 ……さすが惚れただけあって、そんな扱いは嫌なのだろう。必死だった。

「? 変な薫だね……今日」

 決して華奈もそう言った話題に疎いというわけではないのだが、どうやら今日は薫にツキが味方しているらしい。

 不思議そうには首を傾げるものの、華奈の追求はそこまで不覚までは至らなかった。

「ところでさ。二人ともニュース見た?」

 三人ともが制服に着替え終えたところで、ふと華奈がそんなことを口にした。

 どうやら、その余裕がある辺り早起きしたのは本当らしい。

「ニュースって、今朝のか? それなら俺も見たぞ」

 そして薫も同様なのだろう。

 頷きながらそう言っていた。

「この辺りにテレビ局が来たんだよね。私は気付かなかったけど」

「なんだ、そんなニュースがあったのか?」

 今朝のニュースなど、ウィンとの一騒動で見ているはずの無い郁也はその全く話についていくことのできない。

 なので、とりあえずはどんなものかだけでも知ろうとそう問うたのだが――

「うん。あ、ほら。バイト先から郁也の家までの帰り道、あるでしょ?」

「あぁ、あるな……」

 だがそこには何も無かったはず――では、ない。

 思い出した。

 そして同時に、想像出来る。

 そのニュースというのはもしや――

「その途中の道がね? 何でか抉られてたんだって。もの凄い衝撃を与えないとあんな風にはならないって、言ってたぐらい」

「てか、郁也が通った時は何も無かったのか?」

「いや、まぁ……」

 無かった何も……その当事者がここにいる。

「不思議だよね。あんな大きな穴、一晩で開けれるはず無いのに」

「だよなぁ。原因は不明って言ってるけどさ、分かるのかよって感じだし」

 まぁ、そりゃ分かるまい。

 異世界から来た未知の生物が、少年一人殺すための攻撃で開けました、なんてことは。

「あれ、郁也顔色悪いけど……どうかした?」

「……あぁ、うん。何でもない、平気」

 当事者である分、そこまで事が大きくなっていると知ってしまったのであまり正気を保っていられそうに無いだけだ。

 まぁ……それを平気というかどうかは、人により違うはず。

「でも郁也は大変だよね。あれのせいで遠回りして帰らないといけないし」

「……確かに」

 そういえば、ここに来るまで華奈と話し込んでいたからよく覚えては無いが、いつもの道を通っていなかった気がする。

「物騒な世の中になったよな」

「ホントだよ。平和が欲しいー」

 そんな呑気な発言をする二人の傍ら。

 非日常的な日常に飛び込んでしまった少年は、

 ――……俺は現実的な日常がほしかったな

 一人、心の奥で黄昏ていた。

 

 

 

「ねね、郁也」

 仕事中。

 流し台で、隣で同じく皿洗いを担当していた華奈がふとこんなことを訊いてきた。

「郁也の家にいた子、名前なんていうの? てか、日本人じゃないでしょ? 髪の色とか瞳の色とか」

 だがその質問に、郁也はあー……と言葉を濁す。

 どうするか、てかどうしよう。

 郁也はウィンのことを詳しくはまだ知らない。

 だから、その質問には答えることが出来ないのだが――ここは機転を利かせる。

「名前はウィン。両親が二人とも外国人なんだけど、ウィンが生まれる前に日本に移住してきたらしいんだ。それで、ウィンは日本人とはいえないけど日本生まれ日本育ち」

 嘘という名の、機転を。

 それに嘘も方便という。

 ここは、もはや多少の無理であろうが設定を押し通すことにした。

「あぁ、どうりで日本語が上手なわけだね」

「そういうこと。……で、華奈。あまり手元をおろそかにすると、割るぞ?」

「へ? あっ、ヤバっ」

 パリン、と乾いた音。

 さらに落ちた皿が流し台に置いてあった皿を巻き込み、連鎖開始。

 減給確定の時だった。合掌。

 

「うぅ……迂闊だったなぁ……」

 流し台に散らばった皿の破片を集めながら、そう泣き言を呟く。

「ま、自業自得だ。仕事中に他ごとするからだって」

「郁也だって話してたのに……」

「集中力の差だな」

 

 殴りかかられた。

 でも避けた。

 

「ま、これに懲りたら何かやりながら話すのはやめとけ」

「そうするよ……」

 と言いながらも、きっと明日には忘れてるだろう。

 ……まぁ、それでも同じミスをするということはさすがに無いだろうが。

「郁也ー。そっちが済んだらこっちを手伝ってくれ。手が足りない」

 カウンターから薫が顔を出し、こちらに手を振りつつそう告げる。

 了解の意を同じく手を振って返すと、隣で脱力している華奈を横目に、皿洗いの速度を少しばかり上げた。

 ちなみに。

 薫は華奈と一緒に皿洗いをすることを切に希望したのだが、そんなことをすれば薫が集中出来ずに、まさに今の華奈の二の舞のような状況になることを想定した郁也を初めとした店員たちが止めた。

 そしてそのおかげか、惨状は華奈一人分で抑えられたわけだ。

 ……まぁ、結局は割れた以上、ありがたくも何とも無いのだが。

「と、いうわけで華奈。半分はやったから後は任せた」

「へ? ――って早っ。もう終わってるしっ」

「お前が遅いだけだ。俺は無理の無い速度でやってたぞ」

 嘘ではない。

 ただ、華奈が割れた皿に四苦八苦している間に、こちらは手を休めなかっただけだ。

 手伝い? そんなもの自業自得、するはずもない。

 泣き言を吐きながらも残った皿と格闘する華奈をスルーし、薫の方へと向かう。

「待たせた。んで、俺は何をやればいいんだ」

「出来た料理を運んでくれ。今日は客の周りが早くて疲れるんだよな」

「……そんなに早いか?」

 ずっと皿洗いをしていたから気が付かなかった。

「いつもと比べると結構、な。まぁ、とりあえず頼む」

「あぁ、了解」

 まぁ今そんな話はしなくていいだろう。

 休憩が入れば、その時にすればいいのだから。

 

 その時はただそう思っていただけだった。

 気付けば、自分はいつも通りに生活できている。

 そう、自覚したその時だった。

 

『郁也さん、少しだけ、外出します』

 声が――直接頭に届いた。

 

 耳にではなく、頭に直接語りかける様な声が。

「……な――」

『言葉、出さなくても私には聞こえますよ。私の能力を使った念話っていう思念通話みたいなものです。心で話してくれれば、会話が出来ますから」

「? 郁也、どうかしたのか?」

「……あ、いや。何でも、ない」

 いきなりそんなこと、言われても困る。

 能力のことは分かっているとはいえ……いきなりの対応は無理だ。

『……こんな感じか?』

 思うのではなく、心で話す。

 その違いがいまいち分からなかったものの、とりあえずはそれでよかったらしい。

『はい。あ、もちろん普通に話してもらっても伝わりますので、分かりにくければ小声で話してください』

『……ちなみに俺の場合な、ぶつぶつと何か呟いてればしっかりと変人扱いだ』

 だからこのままでいい、と返しておく。

 同時に、少しだけトイレと言って仕事を中断する。

 生憎だが、郁也は念話などという慣れないことと仕事を同時にこなす自信など皆無なのである。

 

『……で、どういうことだ? 外出なんてわざわざ言うことでも無いだろうに』

『いえ、心配させるわけにもいきませんので。……それに、目的は散歩とかじゃありませんから』

 まさか……。と郁也。

 そして、はい。とウィンが。

『昨日と同じ――郁也さんを襲った生き物です。たった今、気配を感じました」

『……本当なのか?』

『はい。能力を使って、そういった気配探知の結界は張ってありますから』

『便利な能力だな……』

 つくづくそう思う。

 ……が、今はそんなことをいっている場合ではない。

『それで、行ってどうするんだ』

『倒します。被害が出ないうちに』

『……分かった。ただし、ちゃんと帰ってこいよ』

『止めないんですね……』

 意外そうな――いや、どちらかと言えば、まるで予想していたかのように静かな声。

『止めたところで、そいつをどうにかできるのはお前だけだ。……だから、止めない。ウィン自身が行くって言うのなら、俺も止めない』

『ありがとうございます』

 どこか、嬉しさを含んだような声の後。

 ぷつりと何かが切れる感覚がして、それ以降ウィンとの会話は終わった。

 

 

 

  あとがき


 皆さんどうも、昴 遼です。

 さて、郁也にロリコンフラグが立ったこの回ですが如何でしたウワナニヲスルヤメ。

 

 とまぁ冗談はさて置き。

 郁也も対応の早い人間、ということで設定を組み替えたのですが、これは早すぎるかな?

 さすがに人間ここまで対応力は早くないぞと思いつつも修正はしないのですがね(オイ

 ともかく、そちらの方が都合がいいのはご愛嬌です。

 ……まぁ、無いように関わらずどことなくほのぼのした場面もありますが、それは気にしない方向でいきましょう。

 次回ですが、どうやらやっぱりまだ異世界へは旅立ちません。というかまだ数話ほどは無理です。

 原作に比べ随分と遅いですが、ぶっちゃけ原作の方が早すぎたんだと割り切りましょう。

 というわけで次回更新が早めにできるよう祈りつつ、今回はこの辺りで失礼します。




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